「パソコンを教えるから分からない。パソコンで何ができるかを教えれば誰もが分かる」…これは、数年前に大阪で開催された或るシンポジウムの席上で堺屋太一さんが仰っていた言葉です。さすがに、ズバリ!IT教育の本質をついています。
しかし、現状のパソコン教室はどうでしょう。ほとんどの教室が、やっぱりパソコンを教えているのではないでしょうか。Windows入門ということで、その基本操作から始まり、ファンクションキーの説明、ファイルの保存、アイコンの表示方法…。次に日本語入力と記号・漢字変換、文節区切りの学習、上書き保存、範囲指定、元に戻す機能…。なかにはこの時点からひたすらブラインドタッチ(タイピング)の練習をさせる教室もありますね。パソコンの前で必死の形相でキーボードと格闘しているご年配の方の様子が目に浮かぶようです。ちなみに私はコンピュータに関わって三十数年、今も普通にパソコンを使っていますが、ブラインドタッチはできません(笑)。
それにしても「ファンクションキー」の使い方などをなぜ最初に教えるんでしょう。これがいきなり覚えられる人はまれだと思いますし、そもそもパソコンの機種が違うと変わったりする代物なのに…。なぜ最初に教えるかというと、これはテキストがそうなっているからなんですね。世の中のテキストの大半が機能説明中心になっています。パソコンはこう動かすんですよ、アプリケーションはこうやって動きます…というように。そして、こんな機能もあんな機能も…といった調子で(普段使わない機能も含めて)いっぱい書いてあります。
おかげさまで、せっかく学ぼうと思ったのに、パソコンは難しいなあ…と言ってあきらめてしまう人が続出です。多くの人たちがもともとコンピュータは難しいものだという先入観を持っていますから、「ああっやっぱりか!」となってしまうわけです。
まさに、「パソコンを教えるから分からない」ですね。
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