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17. 「ねらいの品質」の作り込み
メーガーの3つの質問
教育の計画段階では、研修コースの設計にしても、レッスンデザイン(授業設計)にしても、共通的に大切なのは次の4点だと考えられます。
@ 目標のデザイン(目標を具体化する)
A コンテンツのデザイン(学習内容の構造を明確化する)
B 教授方法のデザイン(授業展開、ストーリーボードを考える)
C 評価方法のデザイン(評価ルールとそのタイミングを考える)
そして、ID (インストラクショナルデザイン)理論の中で有名なものに「メーガー(Meager)の3つの質問」というのがあります。
@ Where am I going? (どこに行くの?)(ゴールはどこ?)
A How do I know when I get there? (ゴールに着いたことをどうやって知るの?)
B How do I get there? (そこにはどうやって行くの?)
の3つですが、それぞれ@は学習目標、Aは達成評価、Bは学習方法(授業スペック)のことであり、ちゃんとそれら(学習者の抱く当然の疑問)を明確にしてから授業に臨んでいますか?…と、メーガーは問うているわけです。
前者は4点ですが、「コンテンツのデザイン」を「教授方法のデザイン」に含めて考えれば、両者はまったく同じになりますね。
学習目標と成果物
レッスンデザインにおいては、学習目標を成果物(Outcome)として極力具体的なものにすることが重要です。そしてその成果物の見本(サンプル)は学習者の到達レベルに合わせて複数のテンプレートを用意することが、「できばえの品質」(実行段階)を上げることにつながります。
「ねらいの品質」を盛り込んだカリキュラムには、最低限、次の内容が記述されていなければならないと思いますが、いかがでしょう。
カリキュラム内容として記述されるべき項目
1.
研修コース全体
@ コース名(タイトル)、研修目的(ゴール)
A 日程(タイム・スケジュール)
B 研修対象者・レベル、想定学習者人数
C 研修環境、使用教材
D(学習者が作成する)成果物とその評価基準
E アンケート内容(事前アンケート、講座確認アンケート、最終アンケート等)
2.
学習内容
@ 学習テーマ、学習目標、到達レベル
A 学習項目、学習形態(講義、演習、グループワーク等)
B 標準所用時間(タイム・テーブル)
C 学習成果物
山本五十六(レッスンデザインの構成)
レッスンデザイン(授業設計)の基本はこうあるべきであろう…と考えています。
@導入…いわゆるオリエンテーションであり、学習のねらい(テーマ)を伝えたり、学習の流れを説明し、達成目標(成果物)をイメージさせるのが、ここでの講師の仕事です。
A起動…成果物のサンプルを見せたり、制作手順やサンプルのアレンジの方法を示します。いわゆる「やってみせる」わけです。
B改造…学習者にサンプルを思い思いに改造させます。講師は机間巡視しながら、個別にアドバイスを行ったり、トピック的に全体に対して説明をしたりします。「やらせてみる」わけですね。
C創作…学習のねらい、方針を再確認しながら、学習者に自由な発想でオリジナルな作品を制作してもらいます。個々の制作状況や学習姿勢を見ながら(これを「モニタリング」といいます)適宜アドバイスをします。ここは「ほめる」ことが大切ですね。
D収穫…成果物の発表・評価を行います。評価は、自己評価を基本に、学習者同士の相互評価や講師評価を取り混ぜます。最後に講師は全体の振り返りをし、次につながるようにします。
有名な(といっても若い人は知らないかも知れませんが)山本五十六元帥の言葉に、『して見せて、言って聞かせて、させて見て、褒めてやらねば人は動かぬ』というのがありますが、まさにこれですね。いやはや、昔の偉い人は流石(さすが)ですね、ズバリと本質を突いています。
ID (インストラクショナルデザイン)
前項の「メーガーの3つの質問」や(後述の)「ガニェの9教授事象」「ARCSモデル」などの理論を総称してID (インストラクショナルデザイン)と呼んでいます。
一般に、講師がうまく教えられるのは経験や直感によるものと考えられていますよね。実際に、IDの理論を知らなくても教え方がうまい講師は数多く存在します。うまく教えられている限りそのような理論は必要ないのかも知れません。でも、それではいつまでたっても講師の善し悪し一つで学習者の命運が決まってしまいます。つまり、「ねらいの品質」は保証されず、全体の教育品質は向上しません。
実は、教え方のうまい講師ほど、後からID理論を知って「こんなのは当たり前だ」と思う事が非常に多いのです。「メーガーの3つの質問」にしても、当然のことを言っているだけですよね。 良い教育や、学習者のためになる学習方法や理論を体系化したものがインストラクショナルデザインなのです。ですから、教え方のうまい講師でもID理論を改めて理解することは、自らの教え方の確認・見直しを通して、教育品質の改善・向上や定着につなげることができます。まして、教え方のへたな講師は、ID理論をしっかり学んで、自分の腕を上達させなければならないのは自明ですよね。
ところで、皆さん、実際のところ「メーガーの3つの質問」をちゃんと守っています?…また、守られている教育の現場を目にしたことがありますか?
まだまだ、企業研修や大学においても、学ぶ内容(項目)のみが挙げられているだけで、それをどのように学習していくか、何ができたら学習できたことになるのかのか…が、依然として不明瞭なままのものが少なくありませんよね。
楽譜と作曲、そして演奏
…と、ここまで書いてきましたが、ただし…ということで、少し逆のことを言います。良い学習のためにIDは必要ですが、ID理論を適用したものが全て良い学習になるとは限らないのです。理屈に振り回されては本末転倒ですよ…ということです。
IDはあくまでも「楽譜」であり、音楽の世界では「曲」自体の方がはるかに重要です。つまり、「楽譜」が読めるだけでは意味はなく、「作曲」したり「演奏」したりすることができて、はじめて意味があります。
お分かりだと思いますが、ここでいう「作曲」とは「ねらいの品質(計画段階)」…特にレッスンデザイン…を比喩し、「演奏」は「できばえの品質(実行段階)」を比喩しています。
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