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18. 「できばえの品質」の作り込み
 
 講師の力量
 
 残念なことに、IT講師の中には教える力量のない講師が数多く存在することは事実です。講師という仕事は、最もコミュニケーション能力が要求される職業の一つですが、IT技術者にはその能力の不足している人間が少なくありません。

 新しい技術を知っているからといって、技術者をそのまま研修の場に講師として立たせているようでは、とうてい「できばえの品質」は保証できるものではありません。でも、現実には「そうは言っても教える人がいない」という理由で、(教える)力量のない講師が教えています。しかも、多くの場合、彼らは(そうした講師は技術者が本業ですから)仕方なく(嫌々)教えています。これで研修の効果を期待する方が無理というものですね。

 やはり、研修実施の前に、講師としての訓練が必要不可欠です。「知っている」ことと、それが「教えられる」ことは、まったく別の次元なのですから…。
 
 
 講師の3つのスキル
 
 講師としてのスキルは、ただテキストをテキスト通り教えているだけでは絶対に身に付きません。
IPA (情報処理振興推進機構)が定義している「ITスキル標準」の職種『エデュケーション』のスキル項目・知識項目にも明示されていますが、講師には、大きく次の3つのスキルが必要です。すなわち「インストラクション手法」「ファシリテーション」「評価手法」です。

 知識の伝達だけならば、「インストラクション手法」と「評価手法」だけで教育は成り立つのかも知れませんが、技術者の技能(スキル)訓練には「ファシリテーション」が必須です。学習者への一方的な知識伝達ではなく、双方向の授業展開をベースに、いかに学習者に気付かせるかが重要なのです。

 「ITスキル標準」の学習内容を踏まえながら、それぞれについてやや詳しく述べます。
 
 
 インストラクション手法
 
 「インストラクション手法」とは教授法としての基本的な「指導」スキルのことをいいます。少し詳細に落とせば以下のようになります。

 @講義に必要な専門知識や技能を持っている。

 A学習目標に向けて効果的なメディアを選択することができる。

 B板書の書き方(消し方)など、基本的な教育技法が身に付いている。

 C声の大きさ、話すスピード、そして、「間」やメリハリが適切である。

 D一方的な説明だけでなく、適宜質問や発問ができる。

 Eプレゼンテーション技術の活用と実践ができる。
 
 
 ファシリテーション
 
 「ファシリテーション」とは、講師が学習者の学習状況を常に把握しているということを前提とした、学習者への「学習支援」「学習促進」スキルのことをいいます。やはり、少し詳細に落とせば以下のようになります。

 @受講者の動機付けと達成感の提供ができる。

 A学習者の質問しやすい雰囲気を作ることができ、質問を傾聴できる。

 B学習者を授業に参画させることができる(集中と気付き)。

 C学習者の学習状況がモニタリングできる。

 D学習目標を踏まえた上で、学習者の状況に合わせた臨機応変な授業展開ができる。

 E講座を実施する上で、学習目標を達成するためのタイムマネジメントができる。
 
 
 評価手法
 
 「評価手法」に関るスキルも少し詳細に落としてみます。

 @学習目標に至るマイルストーンを明確化できる。

 A問題、課題とその評価方法を明確に提示できる。

 B学習者の理解度の向上を具体的な数値で測ることができる。

 C学習者の満足度を量ることができる。

 D学習者の得意領域と苦手領域が判別できる。

 E効果測定をフィードバックすることにより、学習者のさらなる学習意欲につなげることができる。
 
 
 ガニェの9教授事象とARCSモデル
 
 もともと、知識・技術は自ら学んだものでない限り、真に身に付くものではありません。 前述のID理論も、その多くが学習者の動機付けに関するものであり、学習者自身の内発的な動機によってはじめて効果的な学習になることを明確に示しているのです。

 ここで、2つの有名なID理論をご紹介します。「ガニェの9教授事象」と「ARCSモデル」です。いずれも出典は「詳細インストラクショナルデザイン」(2004鈴木克明編著:日本イーラーニングコンソシアム)であり、文章表現には意味を損なわない程度に若干のアレンジが加えてあります。

  「ガニェの8教授事象」は「授業設計理論の父」として著名な学習心理学者であるガニェ(R.M.Gagne)が提唱しました。授業や教材を構成する指導の過程を「学びを支援するための外側からの働きかけ」と捉え、認知心理学の情報処理モデルに基づいて、学びのプロセスを支援する9種類の構成要素を提案しています。

 「ARCSモデル」は、ジョン・ケラー(J.M.Keller)が提唱した学習者の動機付けのモデルです。ケラーは授業システム設計、特に授業場面での動機づけを専門としており、ARCSモデルはIDに限らず学校教育の場でも、授業設計の基盤として導入されています。
 
<ガニェの9教授事象>
<ARCSモデル>

 9つの働きかけ

  @学習者の注意を喚起する

  A授業の目的を知らせる

  B前提条件を思い出させる

  C新しい事項を提示する

  D学習の指針を与える

  E練習の機会を作る

  Fフィードバックを与える

  G学習の成果を評価する

  H保持と転移を高める
 

 A : Attention〔注意〕…面白そう!
 A-1
 A-2
 A-3
知的喚起(学習姿勢をつくる)
探究心の喚起(疑問や驚きを大切にする)
変化性(飽きがこないように工夫する)

 R : Relevance〔関連・適切〕…やりがい!
 R-1
 R-2
 R-3
親しみやすさ(解り易い例や比喩を使う)
目的指向(ゴールを設定し、目指させる)
動機との一致(学習自体を楽しめるように)

 C : Confidence〔自信・確信〕…できそう!
 C-1
 C-2
 C-3
学習要件(頑張ればできそうなレベルで)
成功機会(その都度やった!という実感を)
自己制御(自ら学ぶという意思と態度を)

 S : Satisfaction〔満足〕…やってよかった!
 S-1
 S-2
 S-3
 
自然な帰結(身に付いたことを活かす)
肯定的帰結(褒める、認める、励ます)
公平・公正(学習成果を素直に評価する)
 

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